不動産オーナーの方で「賃貸管理業務適正化法によって何が変わる?」「賃貸管理業務適正化法の内容は?」など疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
賃貸管理業務適正化法は、悪質業者の排除やトラブル防止、円滑な賃貸管理を行うことを目的とした法律です。
ここでは、賃貸管理業務適正化法の内容や法施行によって変わるものについて、解説します。
1.賃貸管理業務適正化法とは
2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が法案として成立し、特定賃貸借契約の適正化のための措置等が2020年12月、賃貸住宅管理業に係る登録制度が2021年6月に施行にされました。
賃貸管理業務適正化法は、賃貸管理業者向けの法律です。近年、管理業務の委託が増加していますが、サブリース契約や悪質な業者とのトラブルも増えています。これまで賃貸管理業に関する直接的な法的規制はありませんでしたが、トラブル防止や円滑な賃貸管理を行うことを目的に、賃貸管理業務適正化法では以下2点が定められています。
・賃貸住宅管理業の登録制度の創設
・サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置
それぞれの内容については、以下のとおりです。
1-1.賃貸住宅管理業の登録制度
賃貸住宅管理業の登録制度が創設されるのは、悪質な業者を排除し、業界の健全な発展や育成を図ることを目的としたものです。
国土交通省では、2011年12月より任意で登録制度を行っていましたが、賃貸管理業務適正化法によって国土交通大臣の登録を義務付けています。
登録申請をする際は、申請件数1件あたり9万円の納付が必要です。また、5年ごとに更新が必要であり、更新手続きの手数料は18,700円(オンラインは18,000円)かかります。管理戸数が200戸未満の事業者は任意登録となりますが、管理戸数が一時的にでも200を超える見込みがあれば、登録をしなければなりません。
また、賃貸住宅管理業者の業務において、次の4点が義務付けられます。
1-1-1.業務管理者の配置
事業者は、営業所または事務所ごとに賃貸住宅管理の知識や経験がある業務管理者を1名以上配置する必要があります。もし、業務管理者を選任しなかった場合や不在の状態で契約締結をすると30万円以下の罰金や7日間の業務停止などの罰則・監督処分の対象になります。
管理業務者は管理業務の実務経験が2年以上あり、登録試験に合格・登録し、宅地建物取引士で「指定講習(賃貸住宅管理業業務管理者講習)」を修了した者です。
1-1-2.管理受託契約締結前の重要事項の説明
管理業務の内容や実施方法について、契約前に重要事項を説明する必要があります。重要事項説明に必要な記載項目としては、次のようなものがあります。
・管理業務の内容、実施方法、対象住宅、契約期間、報酬や支払時期
・責任及び免責に関する定め、契約の更新または解除に関する定めと内容 など
重要事項説明から契約締結までは1週間程度おくことが望ましいとされています。
1-1-3.財産の分別管理
事業者は自己の固有の財産等と管理する家賃等を分別して管理する必要があります。受領した金銭は帳簿や会計ソフト上ですぐに判別できるよう管理しなくてはなりません。
1-1-4.定期報告
事業者は、報告対象期間や管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況について、貸主に定期的に報告する必要があります。
このような業務が義務付けられます。
1-2.サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置
トラブル防止を目的に、サブリース業者の勧誘や契約時に一定の規制が導入されています。また、サブリース業者と組んで勧誘する者についても規制の対象です。規制を違反した場合は、罰金や業務停止命令などの措置が課せられます。
具体的な規制内容は、以下3点です。
1-2-1.不当な勧誘行為の禁止
誤った情報や不正確な情報を用いた勧誘、強引な勧誘、意思決定を歪めるような勧誘などは禁止されています。
1-2-2.誇大広告等の禁止
著しく事実に相違する表示や実際のものよりも優良・有利であると誤認させるような表示の仕方を禁止しています。
1-2-3.特定賃貸借契約締結前の重要事項説明
事業者は特定賃貸借契約締結前に、家賃や契約期間などを記載した書面を交付して説明をする必要があります。
サブリース業者はこのような規制の対象です。
2.賃貸管理業務適正化法によって何が変わる?
賃貸管理業務適正化法の施行で、事業者の登録や契約前の重要事項説明が義務付けられます。悪質業者の排除やトラブル防止を目的としたものです。これまで賃貸管理業に関する直接的な法的規制はありませんでしたが、賃貸管理業務適正化法によって賃貸管理業界がより良いものに変わると期待されています。
まとめ
賃貸管理業務適正化法によって、安心して賃貸管理業務を委託できる環境づくりが推進されています。すでに施行されていますので、法律の内容を確認し、事業者選びやリスク管理に役立てましょう。
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